about You 「あなたについて」一緒に考えます

成長と挑戦を可視化して、自己実現を市場化するメディアづくりに挑みます

個人とビジネスと社会を取り巻く情勢

コロナに翻弄されることになった2020年

2020年4月1日現在、首都圏などの地域に「緊急事態宣言」が出されるかが

日々検討され、その動向が報道されています。

2019年末に中国武漢市から端を欲した最大級の感染症が世界中に拡がり、

多くの活動に、法的、政治的に行われる外的制限以上に

市民として自ら課す内的制限がかかっている情勢に陥っています。

 

相手は目で捉えることはできませんが、確実に猛威を振るっていることから

質が悪く、戦い方も慎重かつ大胆に展開せざるを得なく、

収束するまで先が見えないことに疲弊している現状となっています。

 

ここに良いシナリオを用意する役割は、

政治的判断に委ねざるを得ないかもしれません。

一人ひとりが出来ることは多くはなく、

ワクチンの開発または、有効な治療薬が特定されるまで

感染を拡げないという役割に徹し、刃を砥ぐことに限定されそうです。

 

大戦以来の未曾有の危機が訪れたこともあり、

「その前」がどうだったかということがすっかり忘れられています。

ここでは、今私たちを覆っている危機から

すこし前にさかのぼってお伝えすることにします。

 

2017年に共有されたある危機感

2017年5月、経済産業省からひとつのレポートが共有されました。

「不安な個人 立ちすくむ国家」

第20回 産業構造審議会総会(2017年5月18日)における部会資料の一つとして、

省内若手プロジェクトから東京大学教授陣と、

松岡正剛氏をヘッドとする有識者との意見交換を経て提供された

一人ひとりを閉塞感が覆う産業構造における危機感を表したものです。

 

その危機感を、一言で表しています。

「モデル無き社会」です。

目にしたことが無い方も多いようですので、ここで紹介します。

スライドは、70枚ほどあるので、全てを載せるわけではありませんが、

ここに一枚だけ載せます。

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経済産業省「不安な個人 立ちすくむ国家」スライドより



公表資料ですので、pdfでご覧いただくことが出来ます。

この1枚は、私たちが漠然と抱えている不安・不満を凝縮したものです。

私たちが抱えている不安・不満は4つあります。

「早すぎる変化」

「あふれる情報」

「変わらない仕組み」

「見えない将来」

この4つの不安・不満は、組織中心社会から個人中心社会に移行する中で

個人の決断やリスクテイクに依存する領域が増大したことから

沸き起こっていると書き込まれています。

そして、この4つの不安・不満が覆う社会の液状化

「モデル無き社会」と言いまとめています。

  

次表に、本レポートにおいて「モデル無き社会」を構成するデータを
一覧しておきました。(羅列ですので、読み飛ばしていただいても可)

問題提起1 居場所のない定年後

内閣府   「平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果
 ⇒就業を希望しても1割程度しか常勤の職に就いていない

内閣府   「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果」
 ⇒7割の高齢者は地域における活動にも従事していない

内閣府   「平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果

 ⇒家族や仕事のある高齢者は充分に生きがいを感じるが、

  独り暮らしや仕事なしでは生き甲斐を感じにくい

 

問題提起2 望んだものと違う人生の終末

厚生労働省 人口動態統計/人生の終末段階の医療における厚生労働省の取組/
医療給付実態調査報告 

 ⇒現状病院以外で最期を迎えるという選択肢はほとんどない

内閣府   高齢者の健康に関する意識調査

OCED   OECD Health Data 2014 OECD Stat Extracts            

 ⇒国民医療費の2割が80歳以上の医療費でありその多くを入院費用が占めている

 

問題提起3 母子家庭の貧困

OCED   OCED Family Database

 ⇒母子家庭の過半数は貧困で、日本だけ突出して高い

厚生労働省 平成26年度 所得再分配調査                                                      

 ⇒母子世帯は高齢世帯に比べセイフティネットの恩恵を受けていない

 

問題提起4 非正規雇用・教育格差と貧困の連鎖           

総務省   就業構造基本調査 労働力調査 民間給与実態統計調査 

生命保険文化センター 生活意識調査             

連合総研 BCG分析          

 ⇒貧困が連鎖・固定化する構造

OCED   Social Expenditure/Labor Force Statistics

 ⇒現役世代に極端に冷たい社会

 

問題提起5 活躍の場がない若者      

内閣府  平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査

 ⇒日本の若者は貢献意欲が高いが、社会を変えられると思えていない

日本生産性本部   平成28年度 新入社員「働くことの意識」調査結果

 ⇒若者は社会貢献を諦め、自分中心になっている可能性

未来投資会議      平成29年5月12日 東京大学総長プレゼン資料

 ⇒大学においても若手研究者の活躍の場が急速に失われている

 

問題提起6 多様な人生にあてはまる共通目標を示すことが出来ない政府

内閣府  国民経済計算/国民生活嗜好度調査

 ⇒1人当たりGDPが伸びても、かつてのように個人は幸せにならない

国連     World Happiness Report他

 ⇒1人当たりGDPが幸福度に与える影響は世界的に低下している可能性

  つながりや「健康寿命」も幸福の重要な要

 

問題提起7 自分で選択しているつもりが誰かに操作されている?             

Gallup  2016/Sep. Americans' Trust in Mass Media Sinks to New Low            

PEW RESEARCH CENTER             2016/Feb. The 2016 Presidential Campaign-a News Event That7S Hard to Miss

 ⇒既存メディアに対する信頼は低下し、ソーシャルメディアが信頼される傾向

about Youでは、マーケットリサーチは経産省が代わりに行ったものとして扱います。

 

本レポートが17年末に文芸春秋社から書籍化された後、

2019年5月頃、実際に若手プロジェクトのお一人と、

意見交換をさせていただきました。

 

私の当時のアイデアはアイデアとしてお話しましたが、

お墨付きを頂くことが目的ではなかったことから、

「モデル無き社会は打破できるかどうか。その役割を担っている方はいるか」

という質問を最後にしたところ、官僚氏はこうコメントされました。

 

「モデル無き社会は、既にそうだから変えられない。」

「モデル無き社会について、明確な打破を目指した動きはない。」

Facebookに代わるコミュニティを一から築くことは労力が多大で意味がない。」

「制度設計は一定の進捗にある。」

 

そして、「若手プロジェクトは解散している」とのことでした。

これは、官僚機構の人事異動サイクルの都合でもあるので、

それほどのことではありませんが、

「モデル無き社会の打破」は、経済産業省官僚の役割ではないことを確認しました。

 

「不安な個人 立ちすくむ国家」はFacebookをはじめとして、

官僚が従来の枠組みを越えて提言したと一時期話題になったものです。

しかし、3年経過した今、残念ながら出しっぱなしに近いものとなっています。

危機感として表した「モデル無き社会」を打破する役割が彼らにないからです。

 

そして、2017年5月、同じ月に産業構造に関する情報が海外から届きました。

 

壊滅的な生産性

「ストレングス・ファインダー」というものがあります。

「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす」

という書籍(2001年12月初版:日本経済新聞社)を購入することで、

診断サイトにアクセスできる自己分析ツールです。

 

約180の質問に回答した後、人が共通して持つ34の資質について、

上位5番目までの順番とそのサマリーが手元に届きます。

フィーを支払うと、34全ての順番が届く仕立てです。

 

2017年5月、その新版が出版されました。

「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0」

この出版を記念して、都内ホテルでカンファレンスイベントが開催されました。

私は「Gallup社」の会長ジム・クリフトン氏の講演を一参加者として聴いていました。

 

壇上で披露されたデータは、日本経済新聞社で記事(2017年5月26日)になっています。

世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが分かった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。

 

企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%に達した。

 

かつて「会社人間」と言われた日本の会社員は勤務先への帰属意識を徐々に無くしてきた。それでも仕事への熱意がなぜここまで低下したのか。どうすれば改善するのか。来日したギャラップのジム・クリフトン会長兼最高経営責任者(CEO)に聞いた。

 

――日本ではなぜこれほど「熱意あふれる社員」の割合が低いのですか。

「日本は1960~80年代に非常によい経営をしていた。コマンド&コントロール(指令と管理)という手法で他の国もこれを模倣していた。問題は(1980~2000年ごろに生まれた)ミレニアル世代が求めていることが全く違うことだ。ミレニアル世代は自分の成長に非常に重きを置いている」

 

「それ以上に問題なのは『不満をまき散らしている無気力な社員』の割合が24%と高いこと。彼らは社員として価値が低いだけでなく周りに悪影響を及ぼす。事故や製品の欠陥、顧客の喪失など会社にとって何か問題が起きる場合、多くはそういう人が関与している」

 

――どうすれば改善しますか。

「主な原因は上司にある。上司の言ったことを、口答えせずに確実にやれば成功するというのが従来のやり方だった。このマインドセットを変えないといけない。上司と部下が一緒になってどう結果を出すか、部下をどうやって成長させていくかを考えることが上司の仕事になる」

 

「それには部下の強みが何かを上司が理解することだ。これまでは弱みを改善することに集中するのが上司の仕事だったが、得意でないことが強みに変わることはない。無気力な社員の半数は自分に合っていない仕事に就いている。合った仕事に変えるだけで無気力な社員を半分に減らせる」

 

――米国でマインドセットが変わったのはいつごろですか。

「15年ほど前に動きが始まった。それまでは大手テレビ局も3つ、自動車メーカーも3つ、航空会社も3つと、どの業界も寡占で安定していた。自由化が進んで厳しい状況に追い込まれ、強みを伸ばすことに注力したことで、米国では『熱意あふれる社員』の割合が高まり生産性も上がった。強みを伸ばし熱意ある社員を増やせば業績向上につながることは当社の顧客の事例から証明されている」

 

――日本企業も変われますか。

「日本企業は今、厳しい状況にある。私は過去20年で10回訪日した。当初は日本のリーダーはマインドセットの変革に興味を示さなかったが、今回来日した際の興味の高さに驚いた。生産性を高めることに対する危機感が強い。大きな変革は困った状況にならないと起きないという点で、今は逆にチャンスだ」

 

この世界と比較された私たちを取り巻く現状は、

経済産業省も直近の働き方改革におけるレポートや

講演の中で引用活用していることから、

マーケットリサーチとしては充分現状を反映しています。

 

マネジメントは、それまで生産性向上に資するように

導入・研究・改善が続けられてきました。

しかし、「6%」という数値については、

私たちを取り巻くマネジメントは生産性において

「壊滅的である」であると言い換えるしかありません。

 

同じ月に発信された2つの情報

私は、半年ほど経過してから、あることに気が付きました。

 私たちは「モデル無き社会」に居ること

 マネジメントが「壊滅的な生産性」であること

この2つの情報が、「同じ月」に発信されていることです。

 

同じ月に起こったことに気が付いた時、

これは、両者による犠牲者は量産されているはずだと見つめました。

 

経済産業省アメリカの調査会社と出所は違いますが、

どちらも多くの「従事者」を取り巻く情勢であり、

どちらもネガティブなポジションから道筋を導き出したいあり様です。

私は2017年3月に退職し、4月から「あなたについて」考える働きかけを

どうしたら形に出来るだろうかと構想を練っていた時期にあったことから、

2つの情報の背後にあるニーズがそこにあると見立てました。

 

では「マーケット」は、どこにあるのでしょうか。

about Youでは、「国内に居る従事者の94%」を狙います。

総務省統計局HPから、労働者人口を見るとこうあります。(2020年2月時点)

(1) 就業者数,雇用者数

   就業者数は6691万人。雇用者数は6026万人。

(2) 完全失業者数

   完全失業者数は159万人。

 

(1)にある雇用者数の94%と、(2)の失業者数が

モデル無き社会と壊滅的な生産性の犠牲者であると翻訳します。

 6,026万人 × 94% + 159万人 = 5823.4万人

5,800万人という日本の約半数にわたる犠牲者をカバーするやり方が展開できないか

見つめたいと思います。

 

「弱きが、さらに弱きに刃を突き付けている」社会

ここまで、2つの情報が関連しているのではないかと書き込みしました。

2017年5月から2年経過した、2019年5月にある事件が起こりました。

 

川崎市登戸通り魔事件」です。

 

加害者が私立小学校のスクールバス待機列及び同小学校の保護者に対して

無言で奇襲した後自殺し、それも約十数秒という短時間で実行された

死亡者2名、負傷者が18名に至った事件でした。

 

加害者は長期の引きこもり状態にあったことから、

いわゆる「8050問題」がクローズアップされたことや、

その数日後、長期間にわたる家庭内暴力に苦しんだことから

農林水産省事務次官が、息子を殺害するという事件も起きており、

被害者が同様の無差別な事件を引き起こす可能性を危惧しての犯行であったことから

社会と交わらない期間が長期にわたることの対処の難しさが印象に残る出来事です。

 

引きこもり問題と殺人事件を安易に結びつけたくないという立場の方もいたことから

報道以上の深掘りがされなかったですが、

私は殺人事件と行かなくても

本人が社会のせいにしているという意味での内的原因と、

関係者または支援者の努力とは違う領域にある外的原因が

加害者に長期にわたって作用して、

長期の引きこもり・閉じこもりから彼を引き出すことに

失敗したと言えるのではないかと思います。

 

私自身は、「引きこもり」になったことはないですが、

人生がどこかでつまづき失敗したとき、

「その遅れを挽回できるプロセス」が用意されているかといったら、

少なくても彼らの目の前には登場していなかった。

 

関係者・支援者ともに、引きこもりにある方が彼のペースで社会へ適応していくことを

期待していたとしても、その社会のほうが彼を「ごみ」のように扱い、

彼がそれを敏感に感じ取っていたとしたら、

社会は彼が引きこもる作用を与えていることになります。

 

これまでも、社会に適合・適応できないことに苦しむ方が居たことは事実ですが、

原因となっているだろう特定の関係者に対する怒りの感情を抱くことはあったとしても、

その結末として、彼が長期間溜めに溜めていた攻撃性が無差別な方向に向かうことは

あまり事案が現れていませんでした。想定もしていなかったことです。

 

about Youでは、一人ひとりの自己実現の気持ちを見つめていることから、

2017年に出た「モデルなき社会」と「壊滅的な生産性」の延長に

「弱きが、さらに弱きに刃を突き付けている社会」があり、

状況が悪化していると見ています。

 

モデルなき社会と壊滅的な生産性は、従事者と取り巻く情勢ですが、

「弱きが、さらに弱きに刃を突き付けている社会」は、

社会的弱者と子供世代を覆う情勢です。

特に子供に突き付けられているのは、攻撃性ある無関係者のナイフの先だけではなく、

近親者からの虐待や、いじめに代表される攻撃を伴う人間関係の悪化であり、

壊滅的なマネジメント下に置かれている教師からの評価による個性の抑制です。

 

先ほど、マーケットは「5,800万人」あるという試算をしましたが、

こういった子供世代を含めると20歳未満の人口が「2,153万人」いることから、

 5823.4万人 + 2,153万人 = 7976.4万人

        (平成30年2月時点統計)

 

およそ「8,000万人」を対象に、プロセスを用意し展開しないことには

 「モデルなき社会」

 「壊滅的な生産性」

 「弱きが、さらに弱きに刃を突き付けている社会」

はこのまま変わることはありません。

 

ちなみに、政治は役割として重要ですが、変わりません。

上の3つを手に掛けるプロセスは「創造」を伴う行為が不可欠だからです。

政治は「創造」ではなく、「統治」と「分配」が役割なので、

期待したいことはありますが、ここでは省いて考えることにします。(項目了)